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経理業務の自動化

(2016年9月28日の発行記事です)
今回の号では経理編として、経理業務の自動化(オートメーション化)についてご紹介します。

2016年9月1日付けのウォールストリートジャーナルにおいて、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマート社が7000人の事務職を削減する(The largest private employer in the U.S. is eliminating about 7,000 store accounting and invoicing positions over the next several months.*1)という記事が掲載されました。
同記事によると今後数ヶ月かけて、店舗のキャッシュフロー管理や請求書処理などの業務の大半は、本部又は店舗内に新設する機械(new money-counting "cash recycler" machines)で処理されることになり、それらの業務に従事している従業員は今後接客などの顧客対応に関する業務(customer-facing roles)に従事することになります。

昨今、人工知能(AI)やロボットの研究が急速に進む中で、人が行っていた仕事が機械に取って替わられてしまうという話を耳にすることは多くありました。ただ、実際にウォルマート社のような大手企業が上記のような取り組みを実施するようになり、業種や業態は違っても、自分たちの業務に与える影響をより身近に考えさせられるようになりました。

今回は、このような人工知能(AI)やロボットによる労働の代替化が経理業務に与える影響や、経理業務の自動化に関する具体的な内容と今後経理人材に求められる能力についてご紹介します。

人工知能(AI)やロボットによる労働の代替化

2013年にオクスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士が発表した論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?*2」によると、今後10~20年でアメリカの雇用者の約47%は人工知能(AI)やコンピューターによって仕事が代替されるリスクが高いとされています。

同論文はコンピューター化の障壁としてPerception and Manipulation、Creative Intelligence、Social Intelligenceの3つを挙げた上で、それぞれにおいて具体的に考えられる合計9つの変数を基に、702の職種を評価しています。それぞれの変数が高い職種はコンピューター化されにくいと評価されますが、その中でも「Bookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks」は671位にランク付けされており、コンピューター化されやすい職種として位置付けられています。

Computerization bottleneck(コンピューター化の障壁)

  • Perception and Manipulation
    • Finger dexterity
    • Manual dexterity
    • Cramped work space
  • Creative Intelligence
    • Originality
    • Fine arts
  • Social Intelligence
    • Social perceptiveness
    • Negotiation
    • Persuasion
    • Assisting and caring for others

また、株式会社野村総合研究所によると、日本でも「労働人口の約49%が、技術的には人工知能等で代替可能に*3」なると言われており、「必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い」と考えられます。

経理業務の自動化とは

こうした人工知能(AI)やロボットによる労働の代替化が確実に進んでいく中で、実際の経理現場ではどのような変化が出てくるのでしょうか。

従来の経理業務においては、銀行の取引明細を1件ずつ会計ソフトに入力したり、取引先への代金請求が適時に入金されているか毎日確認したり、経費精算の領収書を照合したりする煩雑な作業がかなりのボリュームを占めていました。 一般的にこれらは単純作業で高度な知識な必要としないものの、人が対応する作業スピードには限界がありますし、もちろん作業ミスも発生することが考えられますので、ミスが発生すればその都度確認と修正作業に時間を要することになります。

これに対して経理業務の自動化が進むと、銀行の取引明細や請求書などのデータをクラウド上やデータ読み取り用のスキャナーを使用することで会計システムに自動で取り込むことができるようになります。
また、データを取り込む際に一定のルール(仕訳入力の際の勘定科目など)を登録することにより、データを取り込むと同時にシステムへの記帳作業も対応できることが見込まれます。今後はシステムのパターン認識能力・学習能力や柔軟性が格段に上がってくることによって、システム自身が判断して記帳するといったように、経理業務そのものが大きく変わる可能性もあります。

さらに、これら一連の作業過程において、従来であれば入力者が自分が入力した金額や内容の照合作業を実施した後に、承認者や別の担当者が目視でダブルチェックしていましたが、今後はシステムが自動で照合作業を実施した上で、照合エラーが発生した部分のみを人が確認・修正すれば済むことになります。これに伴って、自動化による作業スピードの向上とともに、人の作業時間は大幅に削減され、作業ミスも発生しにくくなります。

自動化を可能にする会計システム・サービス

経理業務の自動化を可能にする会計ソフトとして、日本でもMoney ForwardやFreeeといったクラウド会計システムを導入する中小企業が増えてきており、インターネット環境にいれば、いつでもどこでも利用することができるため、近年時間や場所を選ばない働き方を推奨する企業にも受け入れられています。

上記のようなクラウド会計システムでは、一般的に銀行口座の取引明細やクレジットカードの利用明細を自動的に会計ソフトに仕訳入力として取り込めるとともに、PayPalやSquareなどの決済サービスとも連携できるものも出てきています。

また、アメリカでもSAPやオラクルなどがSaaS(Software as a Service)という、必要な機能を必要な分だけ利用できるクラウドサービスを提供しています。これらは短期間での利用開始や、ユーザー数や処理量の急な増減にも対応しやすく、常に最新のソフトウェア機能を使用できるなどといったメリットがあります。

今後の経理人材に求められる能力

このように経理現場においていろいろな変化が予測されますが、自動化される経理業務は主に情報をシステムに入力する「記帳」や入力されたデータを「集計・分析」する部分で、社内の業務フローの設計や事務処理の効率化については、まだ経験や知識のある人の能力が必要と考えられます。

そもそも自動化によってシステムが対応する業務と人が対応すべき業務の役割分担など、高度な判断を要する処理をどうするかといった分野を人が管理することで、記帳を中心とした自動化を達成するための最適な業務フローを組み立てることができます。それによって初めて、自動化されたシステムのポテンシャルを十分に引き出すことができます。

自動化に限らず、ERPなどの会計システムの導入や変更の場合も同様ですが、新しいシステムを入れても「これまでやっていた業務」をベースに考えて、新しいシステムを従来のやり方に合わせようとしていては、大きな無駄を生んでしまう可能性があります。
従来のやり方を単に踏襲するのではなく、この業務は何を達成するためにやっているのか、どのような成果を求めているのか、という意識を経理部内の各担当者が持つことによって、業務をより良い方向に再構築する必要があります。

また、今後の経理人材に求められる能力のひとつとして、会計・経理の知識はもちろんのこと、ITリテラシーが高く、自動化していくシステムや業務フローの設計についても理解していることが大切です。さらに、人工知能(AI)やロボットによる労働の代替化という大きな変化が起こる中でも、常に最新の情報やツールを取り入れていくことで、自動化される業務と人が対応すべき業務をうまく組み合わせた業務フローの構築が可能になります。

参考文献

※1: "Wal-Mart to Cut 7,000 Back-Office Store Jobs" – The Wall Street Journal
http://www.wsj.com/articles/wal-mart-to-cut-7-000-back-office-store-jobs-1472743429
※2:"THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?" – Dr. Carl Benedikt Frey and Dr. Michael A. Osborne
http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
※3:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に - 株式会社野村総合研究所
https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx


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