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従業員のリテンション対策

(2016年3月23日の発行記事です)
今回の管理部門の達人は人事編と題しまして、最新の米国雇用市場のトレンドについてお伝えするとともに、多くの在米日系企業にとって課題である「従業員のリテンション対策」についてご紹介させていただきます。

給与相場の上昇

2008年に発生したリーマンショック以降、米国の給与相場は消費者物価指数(Consumer Price Index)と連動するかたちで上昇してきました。昨年9月当社にて実施した在米日系企業対象のアンケート調査「Salary & Benefit Survey Report 2016」におきましても、昇給率の平均値は3.26%となり、過去数年にわたる昇給率の上昇が見受けられました。2016年に入りCPTの伸び率に鈍化が見えてきているものの、来年度の予測値においても今年と同水準の3.26%という結果となっています。

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また、好調な経済状況や都市部を中心とした生活費の上昇を背景に、カリフォルニア州では2016年1月1日から最低賃金が$9から$10にあがるなど、全米で最低賃金の上昇が広がっていくものと予想されます。
(参考: State of California, Department of Industrial Relations http://www.dir.ca.gov/dlse/faq_minimumwage.htm)

職種別では、エンジニア等の技術職において給与の上昇が著しく、当社Salary & Benefit Surveyにおいても顕著な結果が出ております。同職種の人材需要に対して候補者となる求職者の数が少ないことが、給与上昇の一因として考えられます。

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好景気と離職率

米国雇用マーケットのトレンドのひとつとして、景気好調で給与相場が上昇していく際には、より良い条件を求めて求職活動が活発になるため、離職率が高くなる傾向があります。特に2015年は求人に対して候補者が不足している「売り手市場」となっていました。
当社Salary & Benefit Surveyの結果によると、2015年の解雇・リストラによる退職を含めない離職率の平均は13.51%でした。これは弊社サーベイ結果で過去最も高い数値となりました。

リテンション対策

雇用市場が活発化し求職者が積極的に転職活動を行うなかで、企業にとって課題となるのが人材の維持(確保)=リテンションです。特に高いスキルを持っていたり業績の優秀な従業員のリテンションには、多くの企業が頭を悩ませています。

従業員のリテンションは、LinkedInがまとめている2016年の採用トレンドに関する記事においても「Top Priority」として取り上げられるなど、現在の米国人事において最も注目されているキーワードのひとつです。
(参考: Global Recruiting Trends 2016 https://business.linkedin.com/content/dam/business/talent-solutions/global/en_us/c/pdfs/GRT16_GlobalRecruiting_100815.pdf)

グローバルコンサルティング会社Mercerが実施した調査2015/2016 US Compensation Planning Surveyによると、2016年の米国企業の昇給率は平均2.9%で、2015年の2.8%から僅かながらの上昇である一方、業績優秀な社員Top-Performerに対する昇給率は平均の2倍近いという数値が出ています。人件費をより優秀な社員への昇給に当てることでリテンションを図るという企業のトレンドが見受けられます。
(参考:Mercer News http://www.mercer.com/newsroom/us-salary-increase-budgets-remain-flat-despite-upswing-in-the-economy-and-job-market-mercer-survey-finds.html

在米日系企業におきましては、限られた人件費のなかで基本給やボーナスといった金銭報酬面でのアピールだけでは、米系企業や競合他社に対して採用活動で優位に立つことは難しいのが現状です。リテンション対策として金銭報酬以外ではどのような方策が有効なのか、以下でご紹介させていただきます。

リテンション対策: 福利厚生の充実

福利厚生の充実は採用・リテンションにおいて大変重要な要素となります。
在米日系企業は、医療保険料の企業負担において米国企業よりも手厚い傾向があります。当社Salary & Benefit Surveyの結果では、従業員本人の医療保険料を100% 負担する企業は45.48% と、2015年に比べて5.28% 増加しました。Kaiserによる米国企業対象の調査では、3-199 人規模の企業で100% の負担をしている企業は35%、200 人以上の企業では7% という結果が出ており、日系企業の医療保険料の負担率が圧倒的に高いことがわかります。

その他福利厚生で従業員の関心が高いものとして、日本の年金にあたる401Kプランがあげられます。401Kは近年、在米日系企業の福利厚生のひとつとして定着してきています。昨年のSalary & Benefit Surveyでは、401Kを導入している企業は全体の63.93%、その中で従業員の拠出額に対してマッチングを提供している企業は85.07%という結果でした。弊社から求職者へお仕事紹介をする際にも、401Kプランやマッチングの有無について質問を受ける機会が多くなってきています。

リテンション対策: 新たなトレンド

これまで米国では、優秀な社員のリテンションにおいて最も大切な要素は、金銭報酬すなわち給与額だと言われてきました。従業員を確保するためには、他社と比較して競争力のある給与を設定し、高い昇給率を維持することが最も重要だとする考え方です。実際に様々なサーベイにおいて、金銭報酬が従業員のモチベーションアップに繋がるという結果がでています。

一方近年では、働き方の多様性やキャリアに対する考え方が幅広くなってきており、特に2000年代に成人を迎えたMillennial世代以降の従業員に対しては、単なる給与だけではなく「成長の機会」や「仕事のやりがい」といった要素が従業員の確保に重要であるという、新たなトレンドが生まれています。

日本でもビジネス本売り上げランキング上位となった「Work Rules!」の著者であるGoogle, Inc. Senior Vice PresidentのLaszlo Bock氏は、優秀な従業員を維持する最も重要なポイントとして、以下の2つをあげています。

1) The quality of the people they work with.
2) The feeling that the work they do is meaningful.

市場相場に対して競争力のある給与設定をすることはもちろん、各種福利厚生を充実させることによって採用活動を有利に進め、また入社後には適正な評価に基づいた昇給を実施すると共に、働きやすさや仕事の満足度といった面からも会社の魅力を感じてもらう努力を行うことで、従業員の定着率を上げることができるのではないでしょうか。

参考: Salary & Benefit Survey 2016
在米日系企業を対象に当社PASONA N Aが毎年行っている「現地社員の給与および福利厚生」に関する調査です。
【サーベイ概要】
• 調査期間:2015年9月8日~9月28日
• 調査方法:インターネット調査
• 有効回答数:1,231社
また冊子版の購入を希望される場合には、各地域の弊社営業担当までお申し付け下さい。


【免責事項】
本ニュースレターの内容は、米国人材・人事・経理・給与に関する一般的な情報の提供のみを目的とするもので、法的助言を目的としたものではありません。 法的行動を起こされる際には、必ず専門の弁護士にご相談下さい。

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