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米国の医療保険

(2015年2月25日の発行記事です)
今回は、人事編として米国の医療保険についてご案内します。

2010年3月にPatient Protection Affordable Care Act (通称オバマケア) が成立し、米国の保険も大きく変わってきました。 オバマケアの一番大きな目的はより多くのアメリカ国民に保険に加入してもらうことですが、これを達成するために様々な改革が行なわれています。

例えば保険会社は持病を抱えた方の保険の加入を拒否できなくなったり、医療費が高額になったからといって加入者を保険のプランからはずすことができなくなりました。また医療費の自己負担の年間上限ができたことにより、一定額以上の医療費が発生した場合は医療保険によって治療費が負担されることになります。また会社の提供する保険に加入していない(できない)方でも保険に入ることが出来るよう、連邦政府、または州政府によってマーケットプレイスまたはエクスチェンジ(健康保険取引所)が設けられ、そこから保険を買うことが出来るようになりました。さらに政府が定める一定の所得に満たない低所得者には保険料の補助制度があったり、メディケイド(低所得に提供される公的医療保険)へ加入できるなど、アメリカ国民にとっては今までよりも多くの加入の選択肢ができました。

その一方、Individual Mandate(国民の保険加入義務)やEmployer Mandate(医療保険提供義務)の影響により、企業側にとって多くの課題がでてきています。(どちらとも例外あり)

例えばこれまで従業員へ保険を提供していなかった会社は、今後保険の導入を検討する必要がでてくるでしょう。またすでに保険を提供していても、保険の内容にMinimum Essential Coverageというものが定められており、保険がカバーしなければいけない最低基準の制定があるため、会社の提供する保険がこのMinimum Essential Coverageを満たしていない場合は、これに満たすものに変更する必要があります。

保険を導入し、維持していくためのコストの増加や、国が定めた基準をクリアするためにこれまでよりも高額な保険料を支払わなければいけない企業も多くあるのではないでしょうか。

医療保険にかかるコストは多くの企業にとって今後も引き続き課題になると思われますが、今回はこのコストを抑えるために何ができるのかを考えていきたいと思います。

1.In-Network vs Out-of-Network
すでにご存知かと思いますが、米国にはin-networkの加盟医とout-of-networkの非加盟医がいます。in-networkの加盟医は保険会社と提携しているドクターでout-of-networkの非加盟医は保険会社との提携がないため、 保険会社にて治療に関するコントロールがきかず、in-networkのドクターに比べ、医療費が高くなる傾向にあります。この医療費が高くなると、結果的に毎年の保険料も高くなり、従業員への自己負担額も必然的に高くなってしまいます。 また、out-of-networkの場合、自己負担額が高くなるということだけでなく、かかった費用をまず一度全て自己負担し、その後各自で保険会社へクレイムフォームを提出する必要があるため、従業員の方にとっても手間が掛かってしまいますので、従業員へは出来る限りin-networkのドクターを利用するよう積極的にお勧めしましょう。またin-networkのドクターを利用することにより、結果的に従業員が支払う保険料自己負担分が抑えられることをしっかりと理解していただきましょう。

2. Preventive Serviceの活用を促す
オバマケアの定めているMinimum Essential CoverageのひとつとしてPreventive Serviceというものがあります。これは健康維持に関するサービスや慢性疾患の管理などが無料で行なえるサービスです。従来、アメリカには保険に加入できず十分な医療を受けることができないために結果的に大きな病気をしてしまい、 治療費が支払えない患者や、保険に加入していても加入している保険でカバーされない治療により、多額の医療費がかかり自己破産を余儀なくされた方も多くいます。
オバマケアの導入により、保険の最低基準が設けられ、このPreventive Serviceが受けられるようになったことにより、定期的に病院に行く機会が出来、日ごろから体調の管理を行うことで、大きな病気を未然に防ぐことにつながります。 従業員へこういった予防サービスが無料で受けられることを是非知っていただき、積極的に利用していただくようにしましょう。

3.会社でPhysical Check Up休暇を取り入れる
従業員に上記のPreventive Serviceを積極的に利用していただくために、会社のベネフィットのひとつとしてPhysical Check up休暇を設けている会社もあります。いくら無料で受けられる健康維持サービスがあったとしても、なかなかその時間が取れず、結局は使わずじまいとなってしまうのはもったいないことです。会社の制度としてこうした休暇があれば、従業員はもっと積極的にこのサービスを利用できます。従業員に常に健康でいていただくことは、最終的には会社のコストを下げることにつながるのではないでしょうか。

今後も引き続きオバマケアによる改革が続き、様々な新しい法律や制度が導入されます。それに伴い、担当者にかかる負担も今よりも増えることが予想されます。また日々の業務をこなしながら変化する法律や制度についていくことは至難の業です。このようなベネフィットの維持、管理にかかるアドミのコストについても今後の課題のひとつとなるでしょう。また会社として果たさなければいけない義務や、責任も増えることが想定されるため、今後もオバマケアの動きには常に注意が必要となるでしょう。


【免責事項】
本ニュースレターの内容は、米国人材・人事・経理・給与に関する一般的な情報の提供のみを目的とするもので、法的助言を目的としたものではありません。 法的行動を起こされる際には、必ず専門の弁護士にご相談下さい。

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