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グロスアップの基礎知識 1 (ADPグロスアップ)

(2010年5月の発行記事です)
駐在員の給与業務に携わっている人であれば「グロスアップ計算」という言葉はよく耳にすると思います。簡単に言ってしまえば「所得税の逆算計算」ですが、税務上の居住身分、婚姻状況、同居している扶養家族数、赴任前の所得、帰任後の所得など、さまざまな状況、情報を全て考慮して計算する必要があります。正しくグロスアップ計算をするには、個人確定申告を作成できるだけの知識が不可欠となってきます。実際の計算は会計事務所などに依頼するわけですから、税法を詳しく理解する必要はありませんが、基本的な計算の仕組みを理解することで、日常の業務に生かせることがあると思います。

これから何回かに分けて、さまざまな角度からグロスアップ計算の基本的な考え方を説明いたします。

ADPを使ったグロスアップ計算の落とし穴

毎月の給与計算でADPのグロスアップ機能を使って給与処理をしている会社があります。それ自体に問題はありませんが、計算根拠を理解して使いこなせているかどうかが問題です。以下、どの辺に落とし穴があるのか検証してみましょう。

1) かかる税率

源泉所得税の計算は「Withholding Tax Table」と呼ばれる税額表で算出します。現地社員の場合であれば、本人が提出したForm W-4にある情報を基に、その時のグロス金額に対応する所得税をその表から見出していきます。
この税額表は本人が「独身か既婚者か」、「Exemption(人的控除)は何人分か」の2つだけで税額を確定しています。また、連邦の税額表の計算においては、「項目別控除(Itemized Deduction)」は考えず、「概算額控除(Standard Deduction)」を前提に作られています。
<落とし穴>
Withholding Tax Tableは、あくまで仮納税の為の税金計算手段です。 実際の確定申告で使われる「Tax Table」とは異なります。既婚者の赴任者や帰任者 でよくある「夫婦別申告レート(Married Filing Separate Rate)」はWithholding Tax Tableにはありません。つまり、赴任者や帰任者の月々の税金計算をADPグロスアップでやってしまうと、確定申告で非常に大きな誤差が生じ、大きな還付や追加納税が発生してくる可能性があります。また、NYやCAなどの州税の高いところでは「項目別控除」を確定申告で取るケースがほとんどなので「概算額控除」を前提に計算したものとは誤差が生じてきます。

2) 毎月申告(入力)するネット額と所得税計算

ADPグロスアップの税金の計算方法は、入力されたネット額を年間ベースに置き換え、前述のWithholding Tax Tableで逆算して算出しています。 例えば、月$5,000のNet Amountを入力した場合、ADPのシステムでは12倍して年間$60,000のNet Incomeがあると計算上仮定します。年間のNetが$60,000になるにはいくらの連邦税、州税を上乗せするかをWithholding Tax Tableで逆算してグロスを確定させます(仮に$100,000)。連邦税、州税はそのグロスに対する源泉税(40%相当の$40,000)という理解です。それを12分の一に割り戻したものをその月の源泉所得税としています。
<落とし穴>
この入力した$5,000というのが現地での振込額だけであれば、ADPの計算する所得税は現地の手取り給与だけに対する所得税となります。もし日本の国内給与など、その他所得認識が必要なものがあるのであれば、その$5,000の他に「控除項目(Deduction)」としてその他の所得を入力しておかなければいけません。また、賞与月など支給金額が極端に多い月の場合、前述にある12倍の法則によって計算されてしまうので、想定するグロスが非常に高額となり、必要以上の所得税が計算され高額な納税を強いられることも考えられます。
結論
ADPグロスアップは、年間居住者で、かつ、毎月入力するNet Incomeが一定している場合はあまり問題にはなりませんが、赴任者や帰任者には対応できません。毎月の給与はADPグロスアップでやって、年末調整だけを会計事務所に依頼するというのは考えられますが、帰任者の税調整が年末まで行われないので、税調整やネット調整ができないという事態が起きてきます(詳しくは今後のTOPICで説明いたします)。

ADPグロスアップと会計事務所を上手く使い分けるにはそれなりの知識と経験が必要です。ご注意ください!

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