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個人所得税のアロケーション Part2

(2010年4月の発行記事です)
Vol.1の概略に続き、ここではより詳しく内容を掘り下げてみます。

過半数の企業は米国で発生する所得税はすべて会社に帰属させる方針をとっていますが、年々アロケーションを取り入れる企業が増えています。 そもそも何故アロケーションが必要なのか、という動機づけですが、以下のような理由が考えられます:

1. ある個人が非常に大きな個人所得があり高額な所得税が米国で発生している
2. 個人要素による還付があり、本人が自分への還元を希望している
3. 人事部的な観点から、全海外派遣社員の公平性を保つ為

一般的な海外給与規定では、個人所得により発生する赴任国での所得税負担については言及していません。結果、上記1番にあるようなケースでは、会社がすべて負担しなければいけない事態となっています。個人所得の代表的な例としては、銀行利息、配当金、賃貸収入などです。稀に退職金やストックオプションなど極めて高額なものも含まれてきます。
会社が考える「手取り保証」とは、あくまで会社が支給する給与所得に対する税金を会社が責任を持って負担する、という意味であり、個人的な所得によって発生してくる税金まで負担するというものではないはずです。もちろん、それを含めて「保証」している会社も中にはあるでしょうが、絶対数は少ないと思います

逆に上記2番では、本来自分に還元されるべき還付金を会社に戻入しなければいけない為不満が出てきます。例えば、個人が払っている住宅ローンの利子払いが控除となり還付を受けている場合や、賃貸物件売却における損失による還付などです。

米国以外にも多くの国に派遣社員を送り込んでいる企業では、上記3番のような理由で、赴任国の違いによって起こる不公平感を解消する為、それぞれの赴任国でアロケーションを行っているところもあります(No Loss, No Gain)。

アロケーションをするには費用もかかる為、その必要性(費用対効果)を考えなければいけませんが、事が起こったあとでの対応は会社にとって不利な結果となりがちです。 事前にルールを決めておくことで、上記1番のようなケースが突然出てきた場合でも慌てる必要がなく、冷静に対応できると思われます。

アロケーションを導入するにあたり、最も重要な事は会社の方針(ポリシー)を十分に検討し決定する事です。「給与・賞与以外はすべて本人の責任」と安易に線引きをしてしまうと、 後で本人の理解を得られないケースも出てきますので注意が必要です。特に下記の項目については検討の余地があるのではないかと思います。

1. 日本の金融機関から受け取る銀行利息や配当金

日本で発生している銀行利息や配当金は源泉徴収されています(ちなみに米国内のものは源泉徴収されていません)。ある意味、本人は既に納税義務を果たしていることになります。 米国に赴任した事により、同じ銀行利息、配当金に米国の税率がかかり、日米の税率の差により追加で税金が発生してしまうことがよくあります。この追加で発生する税金を本人に負担させるべきでしょうか?

2. 配偶者の所得(渡米前の日本での所得、および、残留での日本での所得)

これは申告書で「夫婦合算申告」を選択した場合に起こる現象です。 夫婦合算申告を選択する理由は、そうすることで全体にかかる税金を低く抑える事ができる為ですが、結果として配偶者の日本の所得に米国の税率がかかり税金が発生することになります。「配偶者の所得は個人帰属」とした場合、その税金を本人が負担することになり、上記1番同様に、日本での納税義務を果たしているにもかかわらず米国に赴任したことに より本人が税負担を強いられる結果となります。夫婦合算申告の選択が会社理由である限り、本人の理解を得にくいケースです。

3. 配偶者の所得(米国で仕事をした場合)

配偶者が米国で就労するのは個人の意思によるものです。よって上記2番と違い、本人(配偶者)が米国で発生する所得税を負担すべきと思われます。 では、どの税率で本人に負担させるべきでしょうか? その配偶者の所得が年間7万~8万ドルくらいであれば「夫婦合算申告」が有利となりますので、派遣社員の所得と合算して申告することとなります。そこで発生する最終納税額を派遣社員分と配偶者分に更に振り分けなければいけないわけですが、何が正しいというものがありません。いろいろな考え方があるため、それぞれを検討し、会社の理念に合った計算方法を選択することになります。

4. 日本の持家を賃貸した場合の利益

多くの方が赴任に伴い日本の持家を賃貸しています。管理会社を通したり、企業に貸し出ししている場合は20%の一律源泉で税金を支払っていますが、日本の確定申告をすることで還付を受けるケースも多く見受けられます。ある意味前述の銀行利息や配当金のように日本での納税義務を果たしている、とも言えるわけですが、そもそも海外赴任がなければ賃貸による利益は発生していなかったわけですし、しかも、源泉納税した税金全額が還付されるケースも珍しくありません。つまり、利益だけ享受していることになります。そう考えると、賃貸の利益に対する米国税金は本人負担とも考えられるかもしれません。

5. 住宅ローンの利子払い控除による還付(賃貸していない場合)

米国では住宅ローンの利子払いが控除対象となる為、かなり大きな還付が発生してきます。日本では利子払い自体が控除となりませんし、そもそも米国で支払っている税金は会社が負担しているので還付があっても本人に還元するのはおかしい、という考え方もあります。一方、日本では一定の条件を満たせば住宅ローンの残高により控除が受けられる制度もあり、海外赴任によりその権利を喪失することもあり得る為、米国での還付は本人に還元してもいいのでは、という考え方もあります。

6. その他

説明は省きますが、その他にも「外国税額控除(日本で払った所得税)による還付」や 「米国市民/永住権保持者の特別なケース」など、会社方針(ポリシー)を考える上で考慮が必要な事項があります。

既にアロケーションを取り入れている企業でも、上記のような項目を再検討されてはいかがでしょうか。税法も年々変わっていきますし、従来のままの方針ではどこかに「歪み」が起こっているかもしれません。会社も本人も納得できるよう、改善すべきところは改善していかないと、会社への信頼が損なわれてしまうことも考えられます。オフシーズンでしかできないことのひとつです。

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