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第9回 バックアップ要員の重要性とそのつくり方

(2013年2月13日の発行記事です)
メールマガジン「第2回 人の入れ替わりコストを考える」 でも触れましたが、アメリカの企業では人材のターンオーバーが日本よりも高いのが現状です。 第2回で紹介したコスト以外にもターンオーバーが与える影響はいろいろと考えられます。
アメリカでは2週間通知によってスタッフは退職をすることが多いため、後任を見つけたり抜けた穴を埋める対応策の決定をその2週間で行わなくてはなりません。 人が入れ替わったり、スタッフが突然何らかの事情で長期休暇を取らざるを得ない状況になった場合でもあわてず、冷静な対応を取れるよう準備をしておきたいものです。
今回は、その対策のひとつとして挙げられる”バックアップ要員” の重要性とそのつくり方について考えてみたいと思います。

バックアップ要員の重要性

例えばアカウンタントが2週間通知で退職するとします。それまでにジョブシェアリングがおこなわれていれば話しは別ですが、残された2週間で業務の引継ぎを行わなくてはなりません。 退職者の上長が全ての業務を把握していて、一時的にカバーできる余裕があれば良いのでしょうが、あまりそのような余裕のあるケースを耳にしたことはありません。 退職するアカウンタントがどれぐらいの期間そのポジションにいたのかによりますが、長ければ長いほど蓄積されたスキルや知識を2週間で後任などに引き継ぐのは不可能に近いでしょう。 また、経理部の組織が大きければ分業化が徹底されており、空いたポジションの穴を埋めるのは比較的簡単かも知れませんが、少ないマンパワーで経理を回している場合、各スタッフのスキルに頼らざるを得ない部分や一人がカバーする範囲が広いので後任を探すのに苦労することでしょう。

急遽帰国する必要が出たり、諸事情でスタッフが長期間業務を離れなくてはならない状況はどの職場でも起こりうるものです。
このような状況に陥った場合、バックアップ要員がいるのといないのでは大きな違いです。
バックアップを取ることのメリットは多くありますが、今回は3つのメリットを紹介します。

1. 緊急時に冷静な判断ができる

経理には支払や入金作業などの日々と決算などの月次作業があるため、基本的に人が見つかるまで業務を止めるということがなかなかできません。 スタッフが辞めたり長期休暇に入る状況下でも何とかして業務を回さなくてはいけないので、急いで人員補充を行おうとして採用で失敗するのは良く耳にする話しです。 ある程度バックアップが取れていれば、一時的にマンパワー不足で苦しい状況に陥ったとしても、バックアップ要員に何とか踏ん張ってもらい適任が現れるまでじっくりと採用活動を行ったり、業務フローの抜本的な見直しを行うなどの"余裕"が生まれます。
採用活動で失敗すると、さまざまな悪影響を与えかねません。(第1回 "経理スタッフ採用でするふたつの質問" 参照)このような緊急事態でもある程度余裕を持って採用活動を行ったり、冷静に状況を見極めて今後の対応を検討することができるのはバックアップ体制を持っている大きなメリットの一つです。

2. スタッフのスキルアップにつながる

AP担当のAさんと、AR担当のBさんがいると仮定します。いつもは全く別の仕事をしているため、あまりお互いの業務に興味を示さない二人ですが、バックアップをそれぞれ取る ことにすると、AさんはBさんの、BさんはAさんの業務内容を見ることになります。
APばかり行っていたAさんは、今度ARの業務を見ることになるので、ある程度ARの知識をつけることが 可能になります。Bさんにとっても同じことです。 AP/AR担当がいきなり決算業務のバックアップを取ることは難しいかも知れませんが、少しずつできそうな作業を見てもらい何が行われているのか知ってもらうのは可能だと思います。
このように自分の守備範囲以外の業務を見てもらうことによって、スタッフは今まで以上のスキルを付けることができるのです。
新しいスキルを身に付けることで、スタッフのモチベーションアップに貢献する可能性も多いにあります。
例えばBさんが緊急帰国で1ヶ月空けることになった場合、AさんはBさんのバックアップに入り、テンプスタッフもしくは他部署からのヘルプを調達して、Aさんがもともと行っていた AP業務を行ってもらい、AさんはAR業務を行いながら緊急要員のAP業務を管理することで1ヶ月を乗り切ることができるようになるのです。 何となくでもAR業務を知っているAさんがバックアップに入るのと、ゼロからAR業務をスタートしなくてはいけない他社で業務経験があるテンプスタッフがBさんのカバーをするのでは大きな差が出てきます。

3. 業務効率促進のチャンスが生まれる

2. の例で、今まで長年APに携わってきたAさんがBさんのAR業務を見た時に、「なぜ、この作業があるのだろう?」とか「このプロセスなくても問題ないのでは?」などといった違う目線で Bさんの業務を見ることができるかもしれません。 Bさんの目線でAさんのAP業務をみた場合にも同じような疑問が出てくることでしょう。
このようにバックアップを取る目的で他の業務を見てもらったのに、今までのプロセスの見直し、更には業務効率化へのきっかけとなる可能性があります。 当社でも担当するクライアントのアサインメント変更を行ったり、人の入れ替えが発生したときにこのような疑問から業務効率化の促進につながるといった実績は多くあります。
派生的なメリットではあるものの、部署運営の観点からは大きくプラスに作用するメリットといえるでしょう。

バックアップの取り方

バックアップの重要性は理解していただけたかと思います。それではどのようにしてバックアップを取っていけば良いのでしょうか?
ただでさえ忙しい経理部署でバックアップ要員をつくろうとする場合、一時的に部署スタッフの負担が増えるのは避けて通れません。
そのため、なぜバックアップが必要なのか、バックアップがあることでどのようなメリットがスタッフにもあるのかしっかりと説明することが必要です。

1. バックアップが必要な業務をリストアップする

バックアップを取っておきたい業務内容は各企業で違います。当社のようにクライアントに会計サービスを提供している場合には、業務の全てに対してバックアップを取る必要があるのですが社内の経理業務を行っている場合には、少しでも作業が止まったら困る業務に限りバックアップを取っておけば良いでしょう。そのために、バックアップが必須となる作業とそうでないものを リストアップする必要があります。このリスト作成をすると必然的に各ポジションで行っている作業の全てが網羅されてるリストが出来上がるはずです。

2. バックアップを取る担当者を決める

バックアップ取る作業が決まったら、誰にバックアップを取ってもらうかを決めます。部署にスタッフが二人しかいない場合でも、他の部署で可能性はないか?など少し視野と選択肢を広げて見ると今まで思いもよらなかった可能性が見えるかも知れません。
バックアップの重要性 3. でも紹介したとおり、業務効率促進の可能性もありますので、そのような観点で業務を見れそうなスタッフにお願いすると副次的効果が見込める可能性があがります。

3. スケジュールを決める

バックアップを取る業務と人員が確定したら、スケジュールを決定します。月に一度しか行われない作業であれば、2ヶ月から3ヶ月かけて繰り返し業務を行う必要があるかも知れませんし、日々の業務であれば大体2-3週間行えば作業をマスターすることが可能だと思います。 重要なのは、しっかりとスケジュールを立ててスタッフと共有することです。そうすることで、忙しいのは2-3週間で終わるという先が見えるのでスタッフの不安を取り除くことができます。また、実際の作業が始まってからもスケジュール管理をスタッフに任せるのではなく、定期的にレビューする必要があります。バックアップを取りたい業務がしっかりと落とし込めているか スケジュール通りに進んでいるか、進んでいなければ何が原因なのか?を把握して修正を行うようにしないと、失敗に終わる可能性があるからです。

バックアップを取ることでどのようなメリットがスタッフ側にあるのでしょうか?ある程度スタッフ同士でバックアップを取り合う体制ができていると、バケーションや長期休暇などを取った後に戻ってからキャッチアップしなければいけない作業量が少なくて済みます。
もちろんバックアップを取らなければいけない残されたスタッフは大変ですが、そこは今度そのスタッフがバケーションを取る際に同様にバックアップを取ってもらえればバックアップシステムのありがたみを感じてもらえるはずです。
他の業務を見ることでスキルアップにつながることも、スタッフにとってはメリットになり得るでしょう。

マニュアルが整備されている場合でも、実際に作業を行ったことがあるのとないのでは、緊急時の対応には大きな違いが出てきます。マニュアルにどうしても反映できない例外や特殊なトランズアクションなどはどの職場にもあるものです。そのような例外をできるだけ複数で共有していると、いざと言う時でも経理データに大きな影響を与えることなく事態を乗り越えることができます。
今は問題なく業務が回っていても、いつ何が皆さんの職場で起こるか分かりません。緊急事態が発生した場合にでもあわてることなく、冷静に対処できるように最低限のバックアップは取っておくようにしましょう。バックアップを取る期間はどうしてもマンパワーがタイトになりますので、外部から一時的に補充するなどの対策を取るとスタッフへの負担も少なく目的を達成できるかも知れません。

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