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第8回 アメリカのアカウンティングメジャーでは何を勉強してるの?

(2013年1月31日の発行記事です)
今回は経理実務から少し離れて、米国での教育についてお話したいと思います。
皆さんの経理部署にはどれぐらい会計学位をもったスタッフがいますか?
ご存知のとおり、アメリカでは大学での専攻学部と職業が一般的には密接に関わり合っています。
日本の学生のように、専攻学部が法学部で就職先でのポジションがSystem Engineerなどと言うことはアメリカではまずありません。
アメリカでアカウンタントポジションの募集要項を見ると、必ずと言って良いほど応募資格にBachelor’s Degree in Accountingを要しているという条件が含まれています。つまり、大学で会計学位を取得していないと応募もできないわけです。
応募資格にはその他の経験値などももちろんあることがほとんどですが、企業側が応募資格に学位を含めるということは 学位を持っていればそれなりのベースとなる会計知識を持っているといった期待があるわけです。
それでは、アメリカの大学でアカウンティング専攻の学生はどのようなクラスを受講しているのか、一般的なカリキュラムを参考にしながら紹介したいと思います。

日本の大学と同様に、アメリカでも一般教育 (Liberal Arts) のクラスを受講する必要があります。
大学ごとに選択できるクラスの種類は違いますが、おおよそ一般教育では

  • Introduction to Business (ビジネス入門)
  • Introduction to Marketing (マーケティング入門)
  • Introduction to Statistics (統計学入門)
  • Finance Principle (ファイナンス)
  • Macro Economics (マクロ経済入門)
  • Micro Economics (マイクロ経済入門)
  • Business Law (商法)
  • Information Systems and Technology (情報システム入門)

などといったクラスを選択します。
ただし、大学のカリキュラムがCPA受験を前提としたものになると、受験資格を満たすことが目的となるので、ここで選択できるクラスもある程度限られてしまうことがあります。(州によっては、大学で受講したクラスの内、何単位はビジネス関連のクラスでなければならない、などの条件があるのです。)

会計のクラスの種類も当然大学によってばらつきはありますが、おおよそ下記のようなクラスが必須クラスとして設定されています。

【 Principle of Accounting 】

経理・会計への導入クラスです。一般教育のクラスとして設定されていることが多いですが、会計メジャーの学生は必須となっているケースがほとんどです。このクラスでは、そもそも会計の目的は何か?なぜ財務諸表が必要なのか?Balance SheetとIncome Statementの違いは?Assets / Liabilities / Equity って何? と言った基本的な内容を勉強します。Debit / Credit もこのクラスで習います。
一般教育の一部として設定されていることが多いため、他のメジャーの生徒もいるのが特徴です。MBAでは、全ての専攻で必須コースになっていることが多いようです

【 Intermediate Accounting 】

先ほどの導入クラスとはがらりと変わり、Intermediateでは簿記、GAAP (会計原則) を叩き込まれます。カリキュラムの中でも会計色が一番濃いかも知れません。 このクラスで学ぶことが、会計を志す学生のベーススキルとなっていきます。ここでは、アカウンティングメジャーの生徒がほとんどを占めます。 Inventory / Investment / Fixed Asset / Revenue Recognition / Accounting for Income Taxes など、会計を行う上で必要不可欠な知識をこのクラスで習得します。ほとんどの会計原則がカバーされます。
ここで覚える内容はかなりのボリュームがありますので、このクラスを受講している期間は予習・復習・宿題・プロジェクトなどで遊ぶ時間など全く取れない厳しい状況に陥る生徒が多いのではないかと思います。 私が受講したクラスでも、脱落者が多くいました。特にテスト前、生徒は毎回とても分厚いテキストを抱えて、憔悴しきった顔でクラスルームに入ってきていました。

【 Advanced Accounting 】

経理・会計関連では一番最後に取るクラスで、ここでは連結決算・外貨コンバージョン・ガバメント会計などを勉強します。
難易度は高いのですが、Intermediateを経験しているので、ボリュームはそれほど苦しくありません。
ただし、高い難易度についていけない学生は、中間テストが終わったぐらいから姿を見なくなります。

【 Cost Accounting 】

クラス名のままですが、管理会計を勉強します。コストアカウンティングの仕組みや、その他の生産関連の会計についてのクラスです。Managerial Accountingと言うクラス名をつけている大学もあるかも知れません。固定費用、変動費用などの違いや、生産コストの管理方法、更に費用の分析方法などを習得します。

【 Audit 】

監査に関する基礎から監査規定に関してスキルを付けるクラスです。GAAS (監査原則)と監査手順について学ぶことが目的ですが、監査報告書の種類やその内容、監査人・監査法人の法的義務や社会における責任、倫理・道徳など広い範囲にわたり監査の”いろは”を勉強するのがこのクラスです。卒業後、監査業務につく学生も多いのですが、このクラスで学んだことが実際の日々の業務につながっていくので 彼らにとっては後でありがたみを感じるようになるクラスではないかと思います。

【 Federal Income Taxes 】

連邦税の基礎について勉強します。Corporate Income Taxとその他Individual Income Taxにクラスが分かれていたり、一つのクラスで全ての内容を網羅したりとそれぞれの大学で特色がありますが、 Corporate / Partnership / Individualの税法をカバーしていることがほとんどです。税金についての過去の判例や、スキャンダル、最新の情報などについてもクラスの中で話し合います。
税法は頻繁的に改定が行われるためか分かりませんが、深く専門的な知識を身につけるというよりは、税務の基本的概念やIncome Taxを算出する方法などを広く浅く勉強するといった内容だったように感じます。このクラスを受講している途中で、税務に興味を持つ学生とそうでない学生にはっきりと別れていきます。税務が面白いと思う学生は今後のキャリアの選択肢の一つとなり、そうでない学生は税務には関わりたくないと考えるようになるのがこの時期です。

経理の専門クラスはこのような内容が一般的です。アメリカの大学では、多くのクラスでグループプロジェクトがあり、あるテーマに基づいてリサーチや研究を行い、グループごとにクラスの前で発表を行います。例えば、私が受講したあるクラスでは、Enron / Worldcom / Tycoなどの大スキャンダルが起きた背景や、その後に発令されたSOX法の効果などについてのプロジェクトが課されました。
また、特定の上場会社の年次報告書のFootnoteの分析などといったとても時間と手間のかかる内容のテーマも与えられたことがあります。なかなか思うようにことが進まないのがグループプロジェクトなのですが、このような経験を通して実際に社会で経験するチームワークの重要性を学ぶ機会を与えているものと思います。どれだけ自分が努力しようとも、チームとして結果が出せないのでは評価に値しないアメリカ企業での現実を考えると、学生時代のグループプロジェクトの重要性に納得せざるを得えません。
そういった視点で見ると、アメリカの学生はとてもプラクティカルな教育を受けていると言っても良いかも知れません。

最終的には、大学で勉強してきた内容を社会に出てからどれだけ実務で生かすことができるかによって社員は評価されるわけですが、これだけ厳しい内容の授業を乗り越え卒業してきたということ自体も評価に値するのではと個人的には思います。
そういった意味もあり、企業側は会計学位を応募要項に含めているのかも知れません。会計や税務の世界では刻々と規則や法令が変わりますので、卒業した後もどれだけ最新情報を追いかけられるかもスキルを上げる重要なポイントになってきます。
最近では、日本人留学生の数が減り、韓国・中国・インド留学生が多数を占めるようになったようで寂しい限りですが、今後はUS GAAPを習得した日本人の確保が益々難しくなって来るかも知れません。

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