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第2回 人の入れ替わりコストを考える

(2012年10月17日の発行記事です)
アメリカと日本の雇用形態を比べると非常に大きな違いがあるのが分かると思います。日本では終身雇用の崩壊などといったことが叫ばれていますが、アメリカと比べるとまだ人材の流動性は低いといえるでしょう。

アメリカでは一般的に平均4年から5年で転職をすると言われています。ただし、この数字はアメリカ人の平均ですので、日系企業でしかも日本人と限定すると (駐在員を除いた現地社員)、 勤続年数には多少の違いがあるでしょう。現地の日本人スタッフは、ビザの問題や、家庭の事情でどうしても帰国しなくてはいけないなど、本人の意思とは関係なく仕事を離れざるを得ないことが多くあります。

今回のメールマガジンでは、人の入れ替わりによってかかるコストと、日々の経理業務に与える影響などを考えてみたいと思います。

実際にどのようなコストがかかるのか?

Cost of turnover(入れ替わりコスト) に関しては、色々な算出方法や調査結果がオンラインで紹介されていますが、だいたい基本給与の40% 以上はかかるというのが大方の意見のようです。
Executiveなどのポジションを埋める場合には、400% ものコストがかかると算出している例もあります。
$50K のポジションを入れ替える場合、40% ですから$20K ぐらいのコストがかかる計算になります。かなり高額だと思いませんか?
$20K あったら今まで保留にしてきた投資や社員への新しいベネフィットなどを実現できるかも知れません(キャッシュフローとは別の話ではありますが)。人が入れ替わる際にどのようなコストがかかるのでしょうか?実際に目に見えるコスト (Hard Cost) と隠れたコスト (Soft Cost) に分けて分析してみたいと思います。

目に見えるコスト

- HR Cost:  前任者退職の手続き、給与・人事関連の登録変更
- Vacancy Cost:  適任者が見つかるまでのテンプスタッフ、他のスタッフへ業務割り振りによる残業代
- Recruiting Cost:  エージェンシー、広告、候補者選定、面接などの費用
- New Hire:  新任者へのオリエンテーションやトレーニング費用

隠れたコスト

- Lost Expertise: 知識やスキルの損失
- Disruption to workflow: ワークフローの崩れや締切日に間に合わない問題などから派生する損失
- Decrease productivity and customer service: 生産性低下や顧客満足度低下による損失
- Reduced moral: 他の従業員のモラルの低下から派生する損失 (他の社員退職の可能性など)

さまざまなリサーチ結果を調べてみると、生産性の低下によるコストが一番高いと結論付けているケースが多いようです。
隠れたコストのため、意識してみていないとコストとして認識されませんので、実はかなりの損失を与えている可能性は高いはずです。
例えば、アカウンタントを雇用してからトレーニングなどを経てフル回転できるようになるまで、大体3ヶ月から4ヶ月かかります。
それまでの間、生産性は低いわけですから機会費用(Opportunity Cost)がかかっていることになります。
この費用を当たり前のコストと捉えるか、抑制できる費用として捉えるかはそれぞれの企業または前任者の退職理由によって変わりますが、 何らかの手を打つことで入れ替わりを防げたとしたらやはり抑制できるコストとして分類し、今後どのように再発を防げるのかを検討する必要があるでしょう。

コスト以外の影響は?

会社の規模によりますが、経理業務はほぼ毎日のように何かしらの業務が発生します。
人が入れ替わることによって、トレーニングを行ったりする手間が増えるのは当然のこと、前任者からの引継ぎ不備により重要な業務が抜け落ちたりといった影響がいたるところで散見するような状況にもなりかねません。
そうなると、経理データ更には財務諸表の信頼性低下を招きます。
また経理業務では、ほぼ毎月決算業務があり、決算業務には必ず締め日が付いて回ります。
つまり毎月同じ量の業務を今までと同じスピードで行っていかなければならないわけです。
新しいスタッフが前任者と同じレベルの仕事ができるようになるまでは、部署内外のサポートが必要になることも多いでしょう。
このようなケースでは生産性の低下から損失(経費)が発生しているといえます。
当社でもスタッフが入れ替わった場合には、新任スタッフのスピードが上がるまで時間がかかりますので、それまでは他のスタッフが手助けをしたり、 クライアントに資料を提出するまでに上司が何度も内容を確認したりという追加の業務が発生します。

人の入れ替わりが多いポジションでは、やっと業務を覚えてくれたスタッフが退職して、また採用活動とトレーニングを繰り返し、
結局上長が本来すべき仕事ができないという悪循環に陥ります。
このような場合には、人が定着しない根本的な原因を見出し、それを解決しない限り悪循環を止めることは難しいのではないでしょうか? 原因が分からない場合には、外部コンサルタントを雇い、一度業務内容の妥当性などを調査してポジションと業務の難易度などが合致しているのか確認すると 問題点が見えてくるかも知れません。
または、思い切って業務そのものを当社などの委託サービス先に出してしまうのも選択肢のひとつです。
人の入れ替わりが激しく業務が安定しないという理由で、当社に業務を委託されるケースも多々あります。
問題解決のためにはさまざまな選択肢を吟味して、長期的にメリットのある解決策を選択されると良いでしょう。

隠れたコストにも出て来ましたが、他の従業員に与える影響も考慮しなくてはいけません。
ころころと人が入れ替わる職場ではモラルや会社に対する信頼が低下するという調査結果があります。
他の従業員が「またか」と思ってしまう状況ではなかなかポジティブな思考を持って仕事に取り組むのは難しいため、会社全体の生産性もしくは文化に悪影響が出る可能性があります。

人が入れ替わること自体が悪いのかというと、そうでもありません。経理担当が長年入れ替わらないことで、人件費が上昇し続けたり、
業務効率化を図る際の妨げになると言った問題や業務内容がブラックボックス化したりというリスクが発生する可能性もあります。
外部から新しい風を入れたり、高いスキルを持った人に業務を任せることができるといったように、良い結果をもたらすケースもあるので時には入れ替えが必要になることもありますが、 あまりにもターンオーバーが激しい場合には、退職理由を確認して改善できるところがないか確認が必要です。
そのための「Exit Interview」を実施して、どこを改善する必要があるのか調査するのも得策でしょう。どのようにしたら従業員に長く働いてもらえるかどの会社でも永遠のテーマかもしれませんが、上記のようにコスト意識を持って状況を見直すことで意外と重要性が高いことに気付かれる方も多いのではないでしょうか?

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