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第12回 「管理部門の達人」 ~経理編~

(2013年7月24日の発行記事です)
今回の号では、経理に特化した人材事情についてお知らせしたいと思います。
2012年10月に発信したメールマガジン

第1回 経理スタッフ採用面接でする2つの質問

第2回 人の入れ替わりコストを考える

で、採用時の人材ミスマッチを防ぐ方法や、高いターンオーバーが与える影響やそこから生じるコストを考察しました。
どの職場でも優秀な人材を確保することは、目標達成やビジネスの拡大を実現・継続するためには非常に重要な課題です。
経理ポジションにおいても、知識や経験が豊富で業務効率化を推進できるようなスタッフを採用して、活躍できる場を 与えられるかどうかはマネージメントの重要なミッションのひとつと言えるでしょう。
また、経験は少なくても将来有望な新卒戦力を見つけて、育成していくことも業務の継続性を考えた場合には大切なポイントです。

今回は、下記の2つのトピックについて見てみましょう。

  • 日本人経理人材事情
  • 今後の経理・会計人材における課題

【日本人経理人材事情】

在米日系企業において、本社への経理報告や財務資料作成の際にどうしても日本語が必要となるケースは多く、社内のコミュニケーションを円滑に行なうために日本語はもちろん、日本の文化やビジネスマナーが理解できたほうがありたがいと言う願望は強いはずです。
このような日系企業でニーズの高い、アメリカにおける日本人経理要員事情はどうなっているでしょうか?

既に米国内でキャリアを積んで高いスキルを付けた候補者は、引き抜きなどで必要とされるポジションに転職するケースは現在も引き続き見られます。
このような場合にポジションを埋めようとしている企業側は、必要とするスキルセットをピンポイントでリクエストしますので、必然的に候補者の絶対数は減るものの、ある程度納得のいく採用ができるのではないでしょうか?当社のような人材紹介会社を通して採用を行なう場合も多いと思いますが、欲しい人材が 明確になっていますので、採用過程で合否の判断も比較的付け易いものと思います。
このようなキャリア採用とは別に、新卒戦力や将来有望な人材を確保し続けるために、日本では新卒採用がほぼ毎年行なわれます。在米日系企業でも、アメリカで経理の勉強をした新卒社会人を採用して部署と会社に活気を与えたいと願うことも多々あるかと思います。

新卒戦力は経験こそ少ないものの、積極性が高く、体力がありチャレンジ精神旺盛と言う理由から採用を好む企業も多いでしょう。
日本のバックグラウンドをもつ人材の獲得は現地のバイリンガルを雇用する方法と、留学生から雇用する方法があります。日本語スキルや日系企業文化に問題のない留学生を獲得するという観点から見ると、近年、留学生の減少やH1-B ビザの発給数不足などを背景に、新卒や第二新卒採用が難しくなってきています。
日米教育委員会の発表によると、2011-2012年に米国に留学した日本人は、19,966人で前年比6.2%減となっています。2000 年代前半から留学生数は急減し、現在は1980年代後半の水準にまで落ち込んでいるようです。
この20,000人いる留学生の中で、学士以上の学位を目指している学生は約13,800人とのことです。(残りは、語学留学などで学位取得を目的としない留学生)その学生の中で、アカウンティング専攻の学生が2割いて、更にアメリカに残り就職を目指す学生が2割いると仮定すると、該当する学生は560人程度という計算になります。
全米でこの560人をかけて争奪戦が行なわれると想像すると、自社で採用できる確率はかなり低いと思いませんか?また、新卒戦力はビザサポートを必要とする 確率が高いため、前述のH1-B事情を考慮すると、更に採用は厳しいものとなります。
データでは確認できませんが、卒業後にアメリカに残り働いてしまうと、いずれ日本での就職を考えている学生にとってはタイミングの問題など色々な弊害があるらしく、卒業してすぐ帰国してしまう学生が増えているといった話も聞いたことがあります。
アメリカは、経済規模では世界第一位の座にとどまっていることを考えると、今後も日系企業はアメリカでビジネスを継続もしくは拡大していくことはほぼ間違いないでしょう。留学生が激減している現実を考えると、5年後10年後に経理部署、更には経営を担っていくような人材が足りなくなる可能性は多いにあります。
もちろん、日本本社から人員を送り込むという手段はありますが、コストや日本側の人員体制などから現実的ではないと言う声を良く耳にします。そうなると、やはり米国内で人材を確保していくことになるわけですが、円安などの現状を鑑みたときに、今後留学生が急増して新卒戦力が増加するような要素があまり見当たりません。

今後の経理人材に限っていえば、残念ながらあまり明るい材料が見当たらないのが現状ですが、このような状況下でも、アメリカでの成功を夢見て、必死に勉強して大学を卒業した活力のある原石は存在するはずです。いかにしてそのような人材に出会い、育成して保持していくかは在米企業にとって大きなチャレンジのひとつと言えるでしょう。

【今後の経理・会計人材における課題】

企業の財務報告など重要な機能を担っている会計部門ですので、いかなる状況下でも通常業務をこなし、決められた日までに決算を終わらせなくてはいけません。
前述の通り、経理・会計の人材事情はそれほど良くないのが現状ですが、今後どのような課題が待ち受けているのか少し考えてみたいと思います。

一番大きな波は、国際会計基準 ("IFRS") 導入に合わせてやってくるものと思われます。
決算の早期化の要求が本社から課され、そろそろトライアルを今年からなどといった企業の話しも耳にするようになりました。
本社主導で導入は行なわれるものの、実際の早期化の計画と実行は米国側の現場で行なわなければならないケースがほとんどだと思われます。決算の締切日は今よりもかなり厳しく設定されるため、効率良くかつ正確に作業を進めていかなければなりません。このように早期化が始まるとそれに対応できる 決算フローやそれを実現するための人材が別途必要になるかも知れません。
日本語の必要性が全くなければローカルスタッフの採用で乗り切れる可能性はありますが、新しい試みを始める場合には、本社と確認しなければいけない項目が多く社内でのコミュニケーションが確実に増加するため、管理する側からするとできれば日本語環境で業務を遂行できる人材がいて欲しいと思うのではないでしょうか?
厳しい人材事情の中で、どのようにしてこのIFRS導入を乗り切るか今から計画をしておく必要があります。

先ほども触れましたが、今後5年後・10年後に活躍を期待できる日本語の読み書きができる人材が減少しています。
現状は何とか業務が回り、安定したフローが確立されていても、中長期的な観点からすると「人材の穴埋めができない」とか「本社からの要求に対応できない」と言った問題が発生し、解決の手段が見つからないという事態になりかねません。現在、日本人人材に頼り業務を遂行している企業にとっては、深刻な問題ではないでしょうか?
そのような組織で運営している企業は、今からある程度の対策を考えておくに越したことはありません。
ローカルスタッフを採用して業務を行うというのが一番手っ取り早い解決策のように思いますが、マネージメント側の管理方法を大きく変えなければいけない可能性がありますので色々な準備と心構えが必要となるでしょう。今までの経理・会計資料が日本語ベースの場合にも、英語への変換などが必須となりますので、まとまった時間が必要になります。
それと同時に、本社側でも英語でのコミュニケーションが可能になるような解決策を依頼する必要も出てくるでしょう。本社側での対応にも時間がかかりますので、 早い段階で起こりうる問題を提議しておく必要があるかも知れません。

今後更に発展が期待できるクラウド化されたITや、業務委託の活用などでこのような問題を解決していくのも選択肢の一つとしては有効でしょう。

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